日記とメモ

岡田勇人の備忘録・活動録

2016.8.14

私はYくんが手に入れた土浦の家を見に行き、火をおこして貝を焼き、カレーを作ってビールを飲んだ。土浦の夜は横浜よりもずっと気温が低くて涼しかった。まだ家はほとんど廃墟のままで、廊下は埃や土でざらざらしていた。庭の生ゴミ捨てには前日に捌いた鶏の残骸が捨てられていて、被せられた枯れ草の中に無数のハエが潜んでいる。そこに石を投げると、ブーンという音が一斉に鳴り、ハエたちが飛び立ち警戒を伝え合っている。トイレの下水がまだ整っていないので、小便はそこに足す必要がある。夜中、私はビールのせいですぐに尿意を催し、リビングの窓から外に出てその生ゴミ捨てに向かうのだが、明かりなどなく、暗闇に無数の生き物たちが潜む気配に怯える。この時、私の足は前に一歩を踏み出すのを躊躇い、暗闇に慣れない眼は必死に二歩先の状況を把握しようと、耳や皮膚の感覚と協同する。しかし、体がすくんでしまい、ようやく生ゴミ捨ての前にたどり着いておしっこを出し始めても、非常に落ち着かない。出が悪いが踏ん張る。土や芝を踏む足の裏の感覚が普段からは考えられないほど敏感になる。これらの身体の感覚は、子供時代に母方の実家(薄暗くてあまり陽の当たらないじめっとした長屋)で夜中、部屋を出て暗い廊下を一人トイレに向かってこわごわ歩いて行き、急いで用を足すあの恐怖にも似ているのだが、そういうお化け的なものへの畏怖というよりは、自分の肉体の中の野生の感覚が生存をかけた環境を探索するために自然の状況に反応している、というような感覚であった。怯えておしっこをしながらこんなことを考えていた。

翌朝、私は庭に出て生ゴミ捨てを見てみると、昨夜の暗闇の中で見えていたあの捉えきれない枯れ草の複雑な凹凸などなく、こんもりと見やすく盛られた草の上に貝殻が捨てられ、ハエが数匹止まっていた。

私はこんなところで暮らしたいと思ったので、土浦のYくんの家への半移住を決意した。